徳原真人のガーデニングABC
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第74回 我が家の庭物語 -我が家の庭再生の歴史-

文・写真/徳原真人 掲載日:2012年6月6日

メイちゃんみたいにどんぐりを播いて育てた頃もあったっけ・・・

我が家が小山市塚崎に引っ越してきて14年目を迎えました。
私達が国立公園地域内である西伊豆の漁師町から塚崎に引っ越してきた平成10年の秋は、息子が4歳でした。
その頃アニメの「となりのトトロ」がはやっており、メイちゃんとさつきに習って息子が近くの林でコナラの木のドングリを拾ってきました。育苗箱にドングリを播いて育てたコナラの幼木は、現在コッツウォルズ小屋のナエマのバラの株の隣で順調に育っています。
愛犬ピッピと息子と平日に森へ行く時間もあったんだな〜。と思い返します。その息子が小学校中学年になると庭の芝生の中心に、水道の塩ビパイプで作ったサッカーゴールが数年間鎮座していました。

その当時2m程度の幼木を植栽したものは、現在7mを超えています。庭全体からの構造として観てみると、安定感のある樹木に成長しています。一方で成長する樹木に対してほとんど手入れをしないものですから、息子の友達からは、「光くんの家はジャングルみたい」という不名誉なニックネームを付けられてしまいました。

ナンジャモンジャの木

仕事の面では国際バラとガーデニングショーのシンボルガーデンの設計監修(第5回)を頼まれたり、お客様の前で結構生意気な、あるべき論などをお話する機会があります。こんな時逆にクライアントさん側から「それでは徳原さんの家の庭はどうなんですか」という話の流れになると私は返す言葉がありません。「えーと医者の不養生と申しますか・・」と始まり、話題をそらす以外にないのです。

実際仕事の忙しさにかまけて、私自身庭の設計や作庭の仕事をしているにもかかわらず「紺屋の白袴」のたとえのごとく、自宅の庭は誰に何と言われようが、お構いなしの状態でした。
しかし、ある時ふっと頭をよぎったのです。100坪あまりの庭をこのままにして荒らしていてはもったいない。アラ半の私にとって、10年間庭をほったらかしにして荒らしていたのだから、たぶんこの先60歳になっても70歳になっても「忙しい」という口実のもとに、人目にみっともない姿になったままで終わってしまうのではないか。

そんな訳で、自分の庭の身なりも常に端正にしておくべきだと思い直し、平成22年より庭の荒療治にかかりました。

不幸中の幸いか、10年を過ぎた高木は剪定さえすればスケール的に見ても庭の骨格となる樹に育っていました。
特に2004年に植えたアメリカヒトツバタゴ(ナンジャモンジャ)の木は我が家のシンボルツリーになりつつあります。
我が家の庭再生のポイントを次の4つに決めて、出来るところから手掛けることにしました。

庭再生の4つのポイント

明るいイメージの空間にして、四季の変化を思いっきり満喫できること。

逆光の中のアメリカハナズオウ フォレストパンジー

春や初夏の花が美しい事は言うまでもありませんが、夏の西日に照らされたアメリカハナヅオウ フォレストパンシーの逆光に透かされたハート型の輝きに元気を貰ったり、ノウゼンカズラのオレンジ色のビビットな花にビタミン力を頂いたりします。
また、ヤマモミジやソロノキ、ヤマボウシの林床に咲くユリ類の楚々とした姿に「暑中の涼感」を感じることはちょっとした日常の楽しみです。
寒中でさえも、枯れたグラス類に朝日が当たり、枯葉の表面の霜がキラット輝く日の出頃の一瞬などは本当に日本的な美しさだとつくづく思います。


庭は次のシーンを予感させる要素を持っていること。

例えば、サクラの咲く4月上旬はビオラをベースにアリッサムやストック、チューリップなどが咲き揃いとてもポップで楽しく美しい時期です。

我が家はチューリップの後はデルフィニウムやアグロステンマ、オルレアといった少々やさしい色の花が咲き始めます。(5月上旬頃から)。個人的な見方ですが、5月中旬の頃からバラが咲き始めると、これらの控えめな名脇役達の存在感がぐっと薄くなってしまいます。5月〜6月上旬のバラの後はラークスパーやアリウムギガンジウムといった紫系の涼しそうな大人らしい雰囲気の庭に変化していきます。

この様に半月くらいを1つの期間として、「来月はどんな花が楽しませてくれるのかな」といったウキウキ感を見る者に予感させてくれる庭が魅力的な庭だと思います。また、私もそのように管理してみたいと心がけています。

バラとその他の植物がそれぞれに主役になったり、ある時は、脇役に甘んじたり植物同士が仲良く主張してくれること。

この点はバラの愛好家と造園屋の大きな違いであると感じています。私が庭に植物を植たり剪定したりすると、二言目には「バラが・・・バラが・・・」と家内が大騒ぎします。

バラに日影を落とすような高木樹の植え付けは、たとえ幼木を植えたとしても、将来的に大ごとだからです。
私としては、バラについては素人だと思っています。また、バラの開花がピークを迎える頃はバラが主役を張っていることは誰の目から見ても明らかです。しかし、年に2〜3回迎えるバラの時期以外にも、その他の植物とバラが仲良くやって欲しいと思っていますし、それを私は願っています。

何年か前にイギリスのコッツウォルズで見た、壁と大木に絡みついたキフツゲートのバラを見た時は本当にびっくりしました。

■コッツウォルズ調の小屋の外壁に絡むメイディーランド系の白の小バラ

■木陰でも美しく咲いているブレイリーNo2のバラ

先月下旬に訪れた香川県のママンコーシェのバラ園では、チャイナ系のツルバラ ブレイリーNo2が木漏れ日が落ちる樹下で樹に絡まって良く咲いていたシーンを見て大変びっくり(感動)しました。

樹木とバラが共生できるのではないかと期待しています。

庭は生活の中の文化でありたい。

花とおしゃべり好きな知人がオープンガーデンを訪れてくれたワンシーン

バラに関してのみならず私は何かの植物の愛好家ではありません。
庭造り時に植物は庭を構成する一つの要素に過ぎないという考え方で作庭してしまう時があります。
時々家内から私は植物に対する愛情が本当に足りないと言われます。
どうしても仕事的な見方で取り組んでしまうと、最終的に庭空間の全体的な価値を高めることに集中してしまい、バラといえどもひとつひとつのキャストメンバー(要素)として扱ってしまうこともあるかも知れません。
バラの学校で言えば幼稚園の年少さんからスタートした私です。今年一年は、真剣にバラと取り組んでみたいと思います。

最終的な庭の目標は、これらの美しく、また、生き物としての植物を介して、生活が楽しくなり豊かになって、植物好きの人々との交流が深められることにあると思っています。
その意味では、オープンガーデンのシステムは文化的な社会貢献と自分の楽しみが両立できるので素晴らしい事だと思っています。

Bloom Field
株式会社アイ・アンド・プラス Bloom Field事業部