三輪先生のガーデニングABC
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  4. 第15回 草花の優れた新品種を選ぶ ジャパンフラワーセレクション

■第15回 「草花の優れた新品種を選ぶ ジャパンフラワーセレクション」

園芸シーズンともなると、ガーデンセンターや園芸店には色とりどりの花苗がところせましと並びます。中にははじめて目にする花や、聞いたことのない名前のものも少なくありません。1輪、2輪と花をつけた苗が売られていることが多いので、一応どんな花が咲くかは分かりますが、いつ頃まで咲き続けるのか、どんな育ち方をするのか、病気には強いのか、などは判断できません。パンジーやペチュニアといった昔からおなじみの種類でさえ、たくさんの品種を並べて育ててみると、コンパクトにまとまって育って株を覆うように一面に花をつけるもの、枝が高く伸び上がって大きく豪華に育つもの、地面を這うように広がって、1株で大きな面積を覆うもの、などそれぞれに特徴を持っていることが分かります。
こういった特徴は、その苗をどこに植えてどんな楽しみ方をするかを考えるうえで、ぜひとも知っておく必要があるもので、これらの情報を利用者に伝えることは、生産や流通に関わる人たちの大きな責務といえます。最近では一つひとつのポットにつけたラベルだけでなく、ポップやポスター、あるいは大きく育った現物を売り場に展示して、利用者に判断材料を提供しているところが増えたことは、たいへん好ましいことといえます。
夏の審査に出品された品種をパッチワーク状に植え込んだ展示花壇
夏の審査に出品された品種をパッチワーク状に植え込んだ
展示花壇。試作・審査用の花壇は、これとは別に品種ごとに
独立した区画に植え込まれている。
毎シーズンたくさん登場する新しい品種は、種苗会社や個人育種家の長年の努力の結果生み出されたもので、それぞれ何らかの優れた特徴を備えていますが、これらを同じ環境で栽培して、それらの特性を客観的に評価しそのデータを公表することは、それを植えて楽しむ利用者ばかりでなく、新品種を育成する立場からも今後の開発を進めるうえで参考になることが多く、そのようなシステムの必要性は以前から広く認められていました。
欧米ではこのような取り組みは早くから行われていて、アメリカではオール・アメリカ・セレクションズ(All-America Selections : AAS)が75年もの歴史を持っていますし、ヨーロッパでは1970年にスタートしたフロロセレクト(Fleuroselect)で毎年世界中から出品されたたくさんの新品種の試作・評価が行われています。そして、日本でもようやく昨年から同じような事業が始められることになって、花壇用の品種についてはそれを栽培・評価するための花壇が浜名湖花博の跡地、浜名湖ガーデンパークの中に作られました。この事業が「ジャパンフラワーセレクション」です。こういった試作をする場所は本来、気象条件や土壌条件の違ういろいろな地域に設置されることが望まれますが、事業がスタートしたばかりということもあって、いまのところ1ヶ所だけです。今後この事業が順調に発展して、試作花壇も増えることが期待されますし、ぜひそうなってほしいと思います。
ジャパンフラワーセレクション受賞マーク一例

受賞マークの一例。
受賞品種はラベルなどに
このようなマークをつけて
販売することができる。
ジャパンフラワーセレクションでは、種苗会社や育種家から出品された新品種の、ふつう店頭に出まわるぐらいの大きさのポット苗を花壇に植えつけて一定期間栽培し、一般の家庭でできる程度の管理をして、生育や開花の状況の記録を取り、審査会で入賞が決められます。農業祭などのイベントで開かれている「品評会」と違うのは、ここでの入賞は1等、2等などの序列をつけるのではなく、一般家庭や公共花壇などに「おすすめできる」品種であるかどうかの判断をすることにあります。つまり、品評会のように育てた結果できあがった「もの」を評価するのではなく、育てやすい、いろいろな場面に利用しやすい、などといった品種の持つ「素質」を評価しているといえるでしょう。
審査は便宜上季節ごとに区切って行われていますが、年末にその年の入賞品種の中で特に高い評価を得たいくつかの品種に特別賞を与えています。また、もっとも優秀と認められた品種には「フラワー・オブ・ザ・イヤー」(最優秀賞)が与えられます。
審査の結果入賞した品種は、その種子や苗を販売するときに受賞マークをラベルに表示することができます。受賞マークは多少デザインの違うものがいくつかあって、まだあまり目にする機会がないかも知れませんが、今後しだいに増えていくことと思います。受賞はあくまでもその品種の「素質」に対するものですから、店に並んでいる「苗」の品質を保証するものではありません。いくらいい品種でも、苗のできが悪ければ、あとあとその品種の特性を発揮できずに終わるのは当然で、この点は誤解のないようにしておいてください。

さて、2006年には春の審査に32品種、初夏には18品種、夏には36品種、秋には11品種が出品されて、それぞれ14品種、12品種、23品種、8品種が入賞し、このうちフラワー・オブ・ザ・イヤー1品種のほか、15品種に特別賞が与えられています。これらの品種のいくつかをご紹介しましょう。
春の審査対象32品種のうち26品種と圧倒的多数がパンジーとビオラでした。パンジー、ビオラは花色、早咲き性、花期の長さなど、これ以上は望めないほどに品種開発が限界に近づいているように思えますが、それでもたくさんの品種を並べて見ると、やはり優劣が見えてきます。熾烈な競争の中で最も高い評価を得たのはビオラ'サンベリーナ プチモルフォ'で、年間を通しての最優秀賞、「フラワー・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれました。ブルーと黄色という反対色を基調としていながらコントラストが強すぎず、光の角度によって蛍光色を思わせる新しい色調が目を引き、花つきや生育のそろいなどが非常によく、遅くまで株が乱れなかったことなどが評価されたものです。

ビオラ'花岡セレクション 花の丘'はこのタイプの複色のビオラとしては花色のそろいがよく、一般から募集されたモニタ審査員の人気も高く、「モストジョイ特別賞」を受賞しています。
年間最優秀賞「フラワー・オブ・ザ・イヤー」に輝いた、ビオラ'サンベリーナ プチモルフォ'
独特の光沢感、と花つきや草姿のそろいのよさなどが高く評価されて、年間最優秀賞「フラワー・オブ・ザ・イヤー」に輝いた、ビオラ'サンベリーナ プチモルフォ'。
ビオラ'花岡セレクション 花の丘'
小輪パージーともいえる丸弁の整った花をつける、ビオラ'花岡セレクション 花の丘'。春の一般モニタ審査では第1位になった。
このほか、ビオラ'ビビ クリアオーシャン'が、定番の青紫色ながら花色が鮮やかで花つき、生育のそろい、雨に強いことなどが評価されて「ベスト・フラワー」に選定されました。

初夏の花壇では、フロックスの新しい品種が目を引きました。フロックスは従来、春咲き一年草のフロックス・ドラモンディ、夏花壇を彩る大型のオイランソウ、それに花の絨毯を作るシバザクラなどがなじまれていましたが、「キャンディボックス」シリーズのフロックスはまったく新しいタイプの品種群で、草姿や花のつきかたはドラモンディに近いものの、よく分枝して大きな株立ちになり、夏を越して秋まで、花数はやや少なくなるものの休みなく咲き続けるという特性を持っています。出品された中では特に'ブルーキャンディ'が生育、花期の長さなどで優れていたことから、従来にない新しいタイプの品種に与えられる「ブリーディング特別賞」を受賞しています。
ビオラ'ビビ クリアーオーシャン'
「ベスト・フラワー」に選ばれた、ビオラ'ビビ クリアーオーシャン'。定番の青紫色がよく揃って、育てやすい品種。
フロックス キャンディボックス'ブルーキャンディ'
フロックス キャンディボックス'ブルーキャンディ'は初夏から秋まで絶え間なく咲き続ける、従来のフロックスのイメージを打ち破る品種で、「ブリーディング特別賞」を受賞した。
ペチュニアは近年新たに導入された原種の血を取り入れた様々なタイプの品種が続々と登場している花のひとつですが、初夏の審査ではこんもりとまとまった草姿で、暖かみのあるピンクの中輪の花が株を覆って咲く'サフィニアブーケ ストロベリースカッシュ'、それとやや立ち性でよく分枝して花つきのよい「ロンド」シリーズの、濃いピンクで花心が白く抜ける'ローズモーン'と咲き始め紫色から淡い青紫へと変化する'ライトブルー'が「ベスト・フラワー」に選ばれています。
ペチュニア サフィニアブーケ'ストロベリースカッシュ'
ペチュニア サフィニアブーケ'ストロベリースカッシュ'。こんもりと整った株が花に覆われる「ベスト・フラワー」。
ローズモーン
やや立ち性になるロンド シリーズのペチュニアの中で、'ローズモーン'は花心の白が際だって美しく、「ベスト・フラワー」に選ばれた。
夏花壇ではペチュニアを中心にさまざまな種類が出品されました。もっとも注目されたのは'さくらさくら'で、長期間草姿が乱れずに咲き続けるという、これまでに見られない生育特性で、ベタ植えの花壇の素材としては抜群のパフォーマンスを見せたことから、「ニューバリュー特別賞」に推されました。

もうひとつ夏花壇で話題になったのはインパチエンスの新しい品種群「サンパチエンス」シリーズです。非常に生育おう盛で夏までには草丈70cmもの大株になり、秋遅くまで休みなく花を咲かせました。'オレンジ'と'ホワイト'が出品され、'オレンジ'がより旺盛に生育開花したことから、これにも「ニューバリュー特別賞」が与えられています。
ペチュニア'さくらさくら'
「ニューバリュー特別賞」を受賞したペチュニア'さくらさくら'は、夏から秋までまったく草姿が乱れることなく咲き続け、抜群のパフォーマンスを見せた。
'サンパチエンス オレンジ'
'サンパチエンス オレンジ'は従来のニューギニア・インパチエンスのイメージを一新し、真夏の高温、強光下でもおう盛に育って秋遅くまで連続して花をつけ、「ニューバリュー特別賞」を受賞。
このほか、間延びせずコンパクトに育つエボルブルス'ブルーコーラル'がモニタ審査第1位になって「モストジョイ特別賞」を与えられ、夏花壇の特別枠で募集されたマンデビラの中では濃紅色小輪の'サンパラソル レッドミニ'が「ベスト・フラワー」に選ばれています。

秋花壇用の苗は流通も少ないことから出品も少なくなりましたが、従来広く利用されていたジニアの「プロフュージョン」シリーズに八重咲きの品種が4色加えられ、濃いピンクの'ダブル チェリー'の目新しい花色に対して「カラークリエイト賞」が与えられています。
明るいブルーの花をつけるエボルブルス'ブルーコーラル'
茎が間延びせずコンパクトに育って、明るいブルーの花をつけるエボルブルス'ブルーコーラル'はモニタ審査で第1位になり、併せて「モストジョイ特別賞」を受賞。
ダブルチェリー
秋花壇の定番ともなっているジニアの「プロフュージョン」シリーズに新たに登場した八重咲き品種の中で、'ダブルチェリー'はこれまで欠けていた桃色を実現したことで「カラークリエイト特別賞」を受賞。」

ジャパンフラワーセレクションは今年以降も引き続いて浜名湖ガーデンパークで開かれています。花壇用の草花の品種は何ヶ月かの生育期間中、繰り返し観察することが肝要です。試作花壇は常時公開されていますから、ぜひ自分の目で見て判断されることをおすすめします。さらに一般の方からモニタ審査員を募集していて、自分の評価した品種に一票を投ずることもでき、その結果が最終審査に反映されるシステムもありますから、これに参加されるのも有意義なことだと思います。
また、この事業に関するいろいろな情報や入賞品種の詳しいデータなどは次のホームページで公開されています。

ジャパンフラワーセレクション実行協議会(JFS)

○モニタ審査員の登録
問い合わせは: JFS静岡現地事務所
電話 053-488-0250

サンパラソル レッドミニ
夏に特別枠で集められたマンデビラの中では、'サンパラソル レッドミニ'が「ベスト・フラワー」に。よく分枝して、小輪だが花つきがよく、光沢感のある美しい品種。



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